多くの方が糖質と聞くと、「肥満の元」とか「体に良くない」というイメージを持っているかと思います。
しかし、レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)は糖質なのに食物繊維と同じ様な働きをするそうです。
食物繊維を含む食品と言えば、野菜や果物を思い浮かべますが、嬉しいことにお米やさつま芋などはレジスタントスターチを含む食品なので食物繊維と同じ効果が期待できます。
レジスタントスターチは他の食物繊維と同じ様に、腸内環境を整えたり内臓脂肪の増加を抑えたりする効果が期待できるそうです。
レジスタントスターチを含むからと言って、摂り過ぎは良くありませんが、適量を摂取するように心掛けると健康的な食生活を送れそうですね。
この記事では、レジスタントスターチを含む食品と、レジスタントスターチの作り方(増やし方)や効果を紹介したいと思います。
レジスタントスターチを含む食品は?
レジスタント(消化されない)スターチ(デンプン)はその名前の通り「健康なヒトの小腸内で消化吸収されない澱粉(デンプン)および澱粉分解物の総称」と定義されています。
名前や定義から、レジスタントスターチを多く含む食品は、澱粉(デンプン)を多く含むイモ類や豆類などが例として挙げられることに納得できますね。
また、秋田県立大学ではレジスタントスターチを通常のお米の約10倍も多く含む「まんぷくすらり(ジャポニカ米)」の開発に成功しています。
参考:農林水産省 発掘!凄モノ情報局 大学農系学部に潜入!第9回秋⽥県⽴⼤学が開発した新品種米https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2110/univ01.html
レジスタントスターチ(RS)の分類
- RS1 粉砕が不十分な穀類や豆類など、細胞壁に包み込まれていたり、物理的に消化されにくい状態のデンプン 例:玄米などの全粒穀物、パスタなどデンプン密度の高い食品
- RS2 a 結晶構造を保ったままで、澱粉分解酵素が作用しにくいデンプン 例:グリーンバナナ、生のジャガイモなど b アミロースの含量が高いデンプン 例:高アミローストウモロコシデンプン、高アミロース米デンプンなど
- RS3 糊化したデンプンが冷却放置されてできるデンプン(老化デンプン) 例:冷えご飯、固くなったパンなど
- RS4 酵素的、物理的、化学的な処理をしれアミラーゼの作用を受けにくくなった加工デンプン 例:スナック菓子、パン、冷凍食品、麺類、タレ、ドレッシングなどの加工食品
参考:日本調理科学会誌 Vol. 47,No. 1,49~52(2014)レジスタントスターチの栄養・生理機能PDFはこちら
長芋は加熱せず生で大きめに切る
長芋は100gあたり5.8gのレジスタントスターチを含むそうです。
長芋は加熱せず、生ですりおろさずに大きめに切って摂取したほうが、レジスタントスターチをより多く摂ることができることが分かっています。
また、ネバネバした食品は血糖値の上昇を穏かにするので、お米と一緒か食事の始めに食べたいです。
参考:長芋の調理形態と加熱処理温度によるレジスタントスターチ量の変化
まんぷくすらり(ジャポニカ米)使用の食品
秋田県立大学で開発された高レジスタントスターチ使用の食品がありました。
米粉めん 高RS米品種「まんぷくすらり」使用
星型玄米マカロニ 高RS米品種「まんぷくすらり」玄米使用
豆類の中ではアズキが一番多い
長芋だけは特別ですが、こちらも茹でて冷まして食べるのが良いですね。
小豆は、疲労回復やアンチエイジングも期待できまよよ。
小豆と砂糖を加えて加熱することでメラノイジンという抗酸化活性の高い物質ができるので和菓子が好きな方には嬉しいですね。
ただし、小豆は種なので発芽抑制因子が有るため12時間以上水につけてから煮たほうが良いです。
16時間水につけると短時間で軟らかく煮えます。
レジスタントスターチの作り方(増やし方)
レジスタントスターチ量は調理方や保存法によって変化するようですね。
食物繊維と同じ様な特性を持つので、できれば増やして食べたいです。
お米は炊いてから冷蔵保存
お米ののレジスタントスターチ量が調理やその後の保存方法により、どのように変化するのかを調べた実験データがありました。
炊いたお米のレジスタントスターチ量は、冷凍保存よりも冷蔵保存の方が増える様です。
しかし、冷蔵期間を増やしてもレジスタントスターチの量は変わりません。
デンプンが最も老化しやすい温度は0~4℃であり、冷蔵保存は5℃とその温度帯に非常に近かったため冷凍保存より老化が進み、RS量が多くなったと考えられた。
引用元:J-STAGE 一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
米飯保存方法の違いによるレジスタントスターチ量の変化https://www.jstage.jst.go.jp/article/kasei/62/0/62_0_175/_article/-char/ja/
米飯に含まれるレジスタントスターチは豆やイモ類に比べて少ないです。玄米ではRS1に相当するレジスタントスターチがあり白米よりも大腸内で有効に働きます。 参考:健康増進に寄与するルミナコイドとしてのレジスタントスターチの働きPDFはこちら
長芋以外は加熱後に冷蔵庫で保存
長芋は加熱せず生のまま大きめに切ると、レジスタントスターチをたくさん摂取できますが、他の芋や豆は加熱した後に冷蔵庫で冷やすとレジスタントスターチを増やすことができる様です。
さつま芋はレンチンより蒸したほうがよい
徳島県産の鳴門金時(平成22年11月収穫)を用いたデータでは、生、茹で加熱(沸騰後15分間)、蒸し加熱(蒸気20分間)、電子レンジ加熱(200w・5分間)の4通りでのレジスタントスターチ量は、生が12.0%、茹でが8.8%、蒸しが10.2%、レンジ加熱が5.2%という結果が出ています。
さつま芋は蒸した方が、レジスタントスターチを多く摂取できるようですね。
ちなみに不溶性食物繊維の量は、生が5.0%、茹でが7.3%、蒸しが6.0%、レンジ加熱が6.2%とあります。
参考:さつまいもの加熱調理方法の違いによるレジスタントスターチ量と不溶性食物繊維量についてhttps://cir.nii.ac.jp/crid/1390001205691584384
レジスタントスターチの効果
私は以前、糖質の多い穀物の摂取を控えていましたが、さつま芋はレンチンよりも蒸して(冷ますとさらに増える)、ジャガイモはポテトサラダやマッシュポテトなど加熱してから冷やすとレジスタントスターチが増えることを知り、抵抗なく食べることができるようになりました。
極端な糖質制限をするよりも、適度に摂取したほうが嬉しい効果がたくさん有りますよ。
レジスタントスターチはIDF(不溶性食物繊維)に認められる糞便量の増加効果とSDH(水溶性食物繊維)に認められる大腸内の発酵増進作用を併せ持つと言われています。
腸内環境を整える
大腸に流入したレジスタントスターチは、腸内細菌により短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)やガス(水素ガス,メタンガス)に変換されます。※1
短鎖脂肪酸は大腸粘膜の血流を良くしたり、蠕動運動(ぜんどううんどう:消化管などの筋肉が収縮して起こる、波が徐々に移行していくような運動で腸内容を肛門に向かって送る運動)を促進します。
蠕動運動が促進されると、お通じの調子がよくなりますね。
また、短鎖脂肪酸はPHの低下作用が強く、PHの低下により有害な腐敗菌の増殖を抑えたり、一次胆汁酸の有害な二次胆汁酸への変換も抑制する作用があります。(腸内細菌の働きによって生産される胆汁酸の種類は50種類以上存在するとされている※2)
参考文献
※1 健康増進に寄与するルミナコイドとしてのレジスタントスターチの働きPDFはこちら
※2 “胆汁酸 ”を介した腸内細菌と宿主のクロストーク胆汁酸が宿主と腸内細菌の関係を紐解く鍵になるPDFはこちら
腹持ちがよく食事摂取量の減少が期待できる
レジスタントスターチを含む食品は、腹持ちが良く食事摂取量が減少するという報告がある様です。
レジスタントスターチを配合した食品を摂取することで,満腹感が得られて食事摂取量が減少することがヒト試験で報告されている
引用元:日本家政学会誌 Vol. 65 No. 4 197 ~ 202(2014)レジスタントスターチの開発https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej/65/4/65_197/_pdf
レジスタントスターチは、脂質・蛋白質・消化性糖質の一部の消化吸収を小腸上部から小腸下部へと移行させます。
小腸下部に運ばれた脂質・蛋白質・消化性糖質は、消化管ホルモンのグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)やペプチドYY(PYY)の分泌を誘導します。
GLP-1はインクレチン(食事摂取により消化管から分泌され,膵臓β細胞に作用し てインスリン分泌を促進するホルモンの総称)としての作用があります。
PYYは脳の視床下部で食欲を調節して摂食量を減少させる作用があります。
参考:日本調理科学会誌 Vol. 47,No. 1,49~52(2014)レジスタントスターチの栄養・生理機能PDFはこちら
老化米は体に嬉しい効果がたくさんありますが、栄養バランスを考えて適量を摂取しないと、健康を害する恐れもあります。
参考:老化米の投与がラットの成長と鉄状態に及ぼす影響
まとめ
レジスタントスターチは食物繊維と同じ様な働きをすることが分かりました。
よって、穀物は食べ過ぎは良くないですが、全く摂取しないのも食物繊維不足の方には良くない様ですね。
レジスタントスターチを多く含む食品はイモ類や豆類が例として挙げられますが、お米にも含まれるので、お米が好きな方でダイエットを考えてる場合はお米を冷蔵庫で冷やしてレジスタントスターチを増やしてから食べると良いですね。
血糖値をゆっくり上げるために、納豆や長芋などネバネバ系の食品を一緒に食べると良いそうですが、長芋はレジスタントスターチを多く含む食品なので、積極的に摂りたいです。
老化デンプンはイモ類や豆類お米を加熱して冷蔵庫で保存するだけで簡単に増やせます(長芋は加熱で減少)。
ダイエット中の方は栄養のバランスにも注意しながらぜひ試してみてください。
お読みいただきありがとうございました。