全粒粉ライ麦パン(6枚切り食パン1枚分)を毎日食べるとサーチュイン遺伝子を活性化(※)することがメディアで取り上げられています。
しかし、グルテンフリー食の方や低グルテン食の方は、ライ麦パンにはグルテンが有るのか無いのか、有るとしたら含有量はどのくらいなのかが気になるかと思います。
スーパーやコンビニで見かけるライ麦パンは小麦粉も使われているので、グルテンが含まれますね。
今回は、全粒粉ライ麦100%パンにグルテンは有る?のか無い?のかを調べてみました。
(※)サーチュイン遺伝子を活性化するのは、ライ麦や小麦の外皮に含有量が多い「アルキルレゾルシノール」という成分です。
全粒粉ライ麦100%のパンにはグルテンが無い?
ライ麦100%のパンでも、グルテンを少量含みます。
グルテンはパンを膨らませたりもちもちした食感を出しますが、ライ麦100%のパンはグルテンの含有量がごくわずかなので、ずっしりと重く中がギュッと詰まった感じです。
ライ麦はグルテンフリーではない
ライ麦は寒冷地での栽培が可能なので、ヨーロッパや北アメリカで食用を中心に栽培されています。
ライ麦は小麦よりも栄養価がとても高く、GI値は低い(GI値が低い食品ほど血糖値の上昇が穏やか)ので健康的な食べ物として評価されるようになってきました。
また、ライ麦の外皮に多く含まれる「アルキルレゾルシノール」という成分が若返り遺伝子を活性化させると言われていますね。
しかし、グルテンフリー食の方は控えたほうが良いです。
グルテンはグルテニンとグリアジンという2つの成分に水が加わると形成されますが、グルテンによる影響はほとんどグリアジンによるものです。
グリアジンはべとべとする粘性と伸ばすことができる伸展性のあるたんぱく質でプロラミンの一種です。
グルテニンは伸びはしませんが弾性のあるタンパク質でグルテリンの一種です。
『プロラミン 』という名前はプロリン,グルタミンの高含量のアミノ酸組成の特徴から来ているそうです。
特に小麦,ライ麦,大麦(35-37% グルタミン,17-23% プロリン)の『プロラミン』がそうです。
『プロラミン』と比較して,グルテリンは主にグルタミンとプロリンが少なく,他のほとんどのアミノ酸の値が増加しているようです。
参考文献:https://www.kokumotsukagaku.com/dataimge/1621466709.pdf
ライ麦は小麦グルテン由来のグリアジン(プロラミンの一種)に近いアミノ酸(セカリン)を含みます。
よって、ライ麦はグルテンフリーでは無いようです。
FDA(アメリカ食品医薬品局)のグルテンフリー表示の要件定義
FDA はグルテンフリー表示の要件について次の通り定義している。
グルテン含有穀物(”gluten containing grain”)とは以下の穀物のいずれかまたはその交
配種とする。
・コムギ属に属するいかなる種をも含む小麦
・ライムギ属に属するいかなる種をも含むライ麦
・オオムギ属に属するいかなる種をも含む大麦
交配種の一例としては小麦とライ麦の交配種であるライ小麦が挙げられる。その上で、グ
ルテンフリーのラベル表示は以下のいずれも含有していないもの、または本質的にグルテ
ンを含有しないものを意味するとしている。
・グルテン含有穀物である原料(スペルト小麦等)
・グルテン含有穀物に由来しグルテン除去処理が施されていない原料(小麦粉等)
・グルテン含有穀物に由来しグルテン除去処理が施されている原料で(小麦でんぷん等)、
食品中のグルテンを 20 ppm 以上(すなわち 1 キログラムあたり 20 ミリグラム以上)
とする原料また、「グルテンフリー」とラベル表示されている食品にやむを得ず含まれるグルテンは
出典:「米国規制情報調査 -食品におけるグルテンフリー表示-(2016年3月)」日本貿易振興機構(ジェトロ)
20ppm 未満(すなわち 1 キログラムあたり 20 ミリグラム未満)としている。
FDA はグルテンフリー表示の基準値を設定するにあたり、分析的方法を基本としたアプ
ローチを用い、グルテンフリー表示がなされている食品に対する基準の一つとして 20ppm
未満を適用した。なぜなら、FDA が規則の施行にあたって依拠している分析的方法では、
20ppm のグルテンを検知することは可能だが、20ppm より低い水準のグルテンを確実に検
知することはできないからだ。
上記の定義を見ると、小麦だけでなくライ麦・大麦もグルテン含有穀物とされていることが分かりますね。
ライ麦のグルテンに似たたんぱく質の影響
先ほど、ライ麦にもわずかにグルテン含まれていることを書きました。
ライ麦のグルテンは、小麦のグルテンほどの弾力や粘り気は有りませんし、含有量は少ないです。
よってライ麦パンは、ずっしりと重たい感じですね。
また、グルテンを構成するたんぱく質はアミノ酸のプロリンとグルタミンの含有率が高いのが特徴でした。
しかし、人の胃液、膵液、腸管粘膜にはプロリンの消化酵素が無いのでグルテンのたんぱく質は消化されにくいため、免疫系を刺激して小腸に炎症を起こしてしまう様です。詳しくはこちら 高橋医院 胃腸の病気
ライ麦以外の穀類にもグルテンは有るのか無いのか?
グルテンについておさらいしますね。
グルテンは、小麦のグリアジン(プロラミンの一種)というたんぱく質とグルテニンというたんぱく質を水でこねることで形成されます。
ライ麦と大麦には、この小麦グルテン由来のグリアジンに近いアミノ酸を含んでいるので、グルテンフリーでは無いということが分かりました。
グルテンフリー食の方はライ麦だけでなくオーツ麦にも注意
FDA(アメリカ食品医薬品局)のグルテンフリーの定義を見るとオーツ麦はグルテンフリーということが分かります。
しかし、小麦グルテン由来のグリアジン(プロラミンの一種)に近いアミノ酸は、ライ麦のセカリン、大麦のホルディンだけではありません。
オーツ麦のアベニンもグリアジン(プロラミンの一種)に近いアミノ酸なのでグルテンフリーの食事では、こちらの穀物も注意が必要かもしれません。
グルテンフリーメニューのレシピでは、オーツ麦を代替品につかっているものが多いですが、グルテンに反応する方は、アベニンにも繊細な人が多い様です。
これは、オーツ麦のプロラミンが下記のように【小麦,ライムギ,および大麦】と【米,ヒエ,モロコシ,トウモロコシ】の中程度の位置にあることにも関係しているのかもしれません。
小麦,ライムギ,および大麦のプロラミンは, グルタミン(35 ~ 37%)およびプロリン(17 ~ 23%)の最高値を示し,その後にロイシン(6 ~ 7%)およびフェニルアラニン(5 ~ 6%)が続く。 ヒスチジン(1–2%),リジン(≈ 1%),メチオニン (≈ 1%),およびトリプトファン(<1%)は微量で ある。米,ヒエ,モロコシ,トウモロコシのプロ ラミンは,グルタミン(19 ~ 22%)とプロリン(5 ~ 10%)が少ないが,ロイシン(12 ~ 19%)とア ラニン(9 ~ 14%)が豊富である。オートムギのプ ロラミンは中程度の位置にある 。
出典:「グルテンー沈殿要因—1」 “Celiac Disease and Gluten” (by Herbert Wieser, Peter Koehler and KatharinaKonitzer) 2014 の第 2 章 Gluten- The Precipitating Factor の一部を紹介す るものである
グルテンフリーの穀物
グルテンフリーの穀物にはキヌア、米、そば、トウモロコシなどがあります。
グルテンにアレルギーがない人に対して、グルテンフリーの食生活が健康に与える影響は、まだ医学的には証明されていないようです。
また、グルテンが体に悪い影響をおよぼさない方が、グルテンフリーにこだわりすぎると、栄養のバランスを悪化リさせるリスクがあります。
グルテンフリー食品には、小麦に含まれるビタミンBやミネラル・食物繊維などが不足している場合があるので、注意が必要のようです。
偏ったグルテンフリー生活によって、本来必要な栄養素が摂取できず健康に害をもたらす恐れがあるため、足りない栄養素は他の食品で補わなければいけませんね。
まとめ
全粒粉100%ライ麦パンは長寿遺伝子を活性化させると言われていますが、グルテンフリー食の方は控えたほうが良いようです。
グルテンはグルテニンとグリアジンという2つの成分に水が加わるとできます。
ライ麦には、グルテニンもグリアジンも無いのですが、グルテンの構成要素のひとつである「グリアジン」に似た「セカリン」という成分が含まれています。
よってグルテンに似たたんぱく質があり、含有量は少ないですがFDAの定義によるとグルテンフリーではないので、グルテンアレルギーの方は注意が必要です。
グルテンにアレルギーがない人に対して、グルテンフリーの食生活が健康に与える影響は、医学的には証明されていないようですが、原因不明の体調不良のある方は栄養バランスに注意しながら試してみるといいかもしれませんね。
お読みいただきありがとうございました。